レビュー 「GUNDRESS」(1999,日本)

    メインスタッフ
    監督:谷田部勝義/原作:天沢 彰(ORCA)/キャラデザ:青木哲朗/設定協力:士郎正宗
    脚本:ORCA、伊崎健太郎、坂井純一、藤家和正


 この作品の見所は、完成していないのに公開されてしまった、という一点に尽きる。
 その、存在そのものの面白さ以外に、見るべき物はなかったと言っていいだろう。

 なにかすごいのかな?、そう思えるのは冒頭1分ぐらいである。
 その後は、もう無茶苦茶である。
 どのような事態が発生していたか目立つ物だけでも列挙すると、

    ・絵と声(と効果音)があっていない(口パクだけでなく、シーンの切り替えも含む)。
    ・完成した部分だけをループさせたことによる挙動不審な動きをするシーンが複数ある。
    ・動画チェック用なのか、識別用の色以外塗られていない部分が多数(後半ほど酷い)。

 だが、この「GUNDRESS」のすごさはその目に見える部分だけには留まらない。
 なんといってもすごいのがその話の作り方のテキトーさ加減であろう。

 ジャンル的には「対テロ部隊VSテロリスト」もので、それにメカと銃と女の子が出てくるもの、既存の作品で言うならば「ガルフォース地球章」や「バブルガムクライシス」「アップルシード」、あるいは「サイレント・メビウス」などの流れにつらなる作品である。

 そういう流れを汲む物であるから、ストーリーはその少女達が苦闘しつつ敵に勝利する、というものになる。
 実際に話を要約すると確かにそうなると思われる。けれども、なぜかストーリーがあったという印象がないのだ。

 その原因は簡単である。詰め込み過ぎなのだ。
 購入したカタログによれば、脚本を書いたチームは26話完結のTVシリーズが作れてしまうぐらいの分量のあるシナリオを上げ、そこからボリュームダウンを行って90分に纏めた、らしいが、それがいけなかった。
 ボリュームダウンに失敗して、ただのTVシリーズダイジェストになってしまったのだ。
 結果、テンションの高原状態が持続し感動が薄い、キャラクターへの説明が不十分でその行動に必然性が感じられないといった状況になってしまった。
 ついでに言えばセリフ回しもあまりに単調で悲しくなったが。

 カタログを見ればキャラクターにも、世界にもちゃんと設定があるのだけれど、活かし切れていない、というか設定しただけで満足してしまっているような雰囲気すら感じてしまう。
 キャラクターに関して言えばその設定は悪い意味でアニメ的すぎて、もうちょっとどうにかならなかったかな、という部分も多数ある。特に笑いをとる為のキャラ(と想定される)エンドウ警部の存在がはっきり言って邪魔だった。
 これが何か別の作品のパロディで、そのキャラを出すこと自体に意味があるのでなければ、いなくても構わないキャラクターが存在しているという不思議。
 まさに、一昔前の設定オタクの作った作品を地で行っている。

 その割には「お前ら、調べて書いてないだろ」と言いたい部分もかなりあってツッコミたいのだが、その辺はもう始めるときりがないのでカット。

 家に帰ってから心を癒すために見た「カウボーイビバップ」の方が作画も、話も、数十段上だったのは言うまでもない。

 なお、入場するときには「いいんですね」と念を押された上で完成版ビデオの引換券兼お詫びの紙、というものをもらえた。
 ここに参考までにアップしておこう(約75KB)