見読聞飲食 その4

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ここは、見たり聞いたり読んだり飲んだり食べたりしたものへの雑感を
微妙にテイストニュース風に書いていこうかと思う場所です。
ここの文章は適宜他のコーナーに再利用していくことも視野に含めつつ。


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片瀬二郎「スリル」 010829

 この小説は「ゲーム」を題材にしており、なおかつ「ホラー」である。とはいえ「クリス・クロス」のようなタイプの小説ではない。もう少し不条理な、そう「バトル・ロワイアル」のような暴力的な不条理さを持ったゲームの小説である。

 しかし「バトル・ロワイアル」が乾いていたとすれば、これは湿っている。あるいは作中の表現を借りるならば「ぬめぬめ」である。そして文章を読んでいる間中、些細なことが気にかかる。文章の中の些細なことではない。文章を読んでいる自分が感じる些細なことである。作中で「兆候」と呼ばれるもの。それを見逃した結果登場人物達にふりかかる災厄があたかも自分にまで降りかかってくるかのように。目の前で乗れそうだった電車のドアが閉まること。乗った電車の中で子供が騒ぐこと。誰かが缶ジュースでもこぼしたのか床がべたついていること。なんでもいい。些細なことが気になるのだ。本の中から現実が侵食されているかのように。
 幾たびか現れるサイコな描写も末節に過ぎない。じわじわと湿気に侵食される感覚こそがこの作品の最大の魅力である。

片瀬二郎「スリル」
ENIX(ENIX EXNOVELS)/2001年8月3日初版
新書版/1300円/ISBN:4757504829


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いろいろ 010828

 最近(一月前くらいのもあるけど)読んだ本について色々。

 その1「戦闘糧食の三ツ星を探せ」
 その名の通り戦闘用糧食のレビュー本。
 帯にもあるが「お国柄や食文化、思想の違いが一目瞭然」である。いかにも合理的なアメリカ軍のレーション。市販品詰め合わせのフィンランド軍。レトルト食品大国らしい自衛隊のレーション。といった具合に。
 コラムから泥縄的に制作された本らしく、レビューの記述などがあまり一貫していないのは減点だが、それ以外のネタッぷりなどはほぼ満点だろう。
 7月15日読了。

 その2「さすらいエマノン」
 少し寂しげな文体がとても心地よいSF、なんだろう。きっと。
 未だに「おもいでエマノン」が捕獲できないので少し悔しい。
 多くは語らない。読め(笑)
 8月8日読了。

 その3「Missing 神隠しの物語」
 この辺から感染した物語。
 読んでいて川又千秋の「幻詩狩り」をふっと思い出したり。こちらは物語を知ることでなく、テキストそのものに触れることで異界のトビラが開ける物だったが。
 で。確かに………オチは、微妙かも………。
 8月19日読了

 その4「Tweleve Y.O.」
 ずるずると来てしまった「戦後」への問いかけを敷き詰めている作品のはずなのだけど、どーにもウルマ(あるいは理沙)がNOIRの霧香に見えてしまい。ポリティカルアクションでも何でもない実は良質の萌え小説なんじゃないかというそんな気さえ。
 ダメ人間でごめんなさい………(笑)
 8月27日読了

大久保義信「戦闘糧食の三ツ星を探せ」
光人社/2001年7月9日初版
A5/2300円/ISBN:4769810083

梶尾真治「さすらいエマノン」
徳間書店(徳間デュアル文庫)/2001年2月28日初版
文庫版/562円/ISBN:419905037X

甲田学人「Missing 神隠しの物語」
メディアワークス(電撃文庫)/2001年7月25日初版
文庫版/570円/ISBN:4840218668

川又千秋「幻詩狩り」
中央公論社(中公文庫)/1985年11月初版(絶版)
文庫版/524円/ISBN:4122012716

福井晴敏「Tweleve Y.O.」
講談社(講談社文庫)/2001年6月15日初版
文庫版/648円/ISBN:4062731665